「○○は体に良い」「△△は食べてはいけない」
そんな健康情報を、ネットやSNSで見かけることが増えました。
しかし、食と健康に“絶対”はありません。人それぞれ体質も生活リズムも違うため、「万人に合う食事法」は存在しないのです。
この記事では、よくある誤解を科学的な視点から整理し、自分に合った食習慣を見つけるための考え方をご紹介します。
誤解①:「炭水化物は悪者」
糖質制限ダイエットの流行により、「炭水化物=太る」「不健康」というイメージが広がりました。しかし、炭水化物は脳や筋肉の主要なエネルギー源であり、完全に抜いてしまうのは逆効果です。極端な糖質制限は、倦怠感や集中力の低下、便秘、筋肉量の減少を招くこともあります。大切なのは「質と量のバランス」。精製された白米やパンばかりでなく、玄米や全粒粉、野菜・果物など“ゆるやかに吸収される炭水化物”を選ぶことがポイントです。
参考論文:Hu, T. et al. (2012). Effects of low-carbohydrate diets versus low-fat diets on metabolic risk factors. American Journal of Epidemiology.
誤解②:「カロリーが低ければ健康的」
カロリーを減らせば健康になる、というのは単純すぎる見方です。確かに摂取カロリーが多すぎると肥満の原因になりますが、“質の良い栄養”を摂ることの方がはるかに重要です。同じ200kcalでも、清涼飲料水とナッツでは体への影響がまったく違います。ナッツには良質な脂質・ビタミンE・ミネラルが含まれ、心血管疾患のリスク低下と関連する研究もあります。
参考論文:Guasch-Ferré, M. et al. (2013). Nut consumption and risk of cardiovascular disease. BMC Medicine.
誤解③:「サプリで栄養は完璧に補える」
便利なサプリメントですが、食事の代わりにはなりません。食品には単一の栄養素だけでなく、食物繊維・抗酸化物質・フィトケミカルなど多くの“相乗効果をもつ成分”が含まれています。サプリだけに頼ると、この「全体のバランス」が失われる恐れがあります。また、高用量の一部サプリは害を及ぼすリスクも報告されています。
参考論文:Miller, E. R. et al. (2005). High-dose vitamin E supplementation may increase all-cause mortality. Annals of Internal Medicine.
誤解④:「朝食を抜くと太る」
「朝食を抜くと太る」というのは長年の常識でしたが、近年の研究では体重増加と朝食の有無に明確な因果関係はないことが示されています。むしろ、空腹感のコントロールや生活リズムによって「食べる方が調子が良い人」「食べない方が合う人」がいます。重要なのは自分の体調やパフォーマンスに合わせて柔軟に判断することです。
参考論文:Betts, J. A. et al. (2014). The causal role of breakfast in energy balance and health: a randomized controlled trial. American Journal of Clinical Nutrition.
誤解⑤:「健康食=制限と我慢」
「健康のために○○をやめなきゃ」と考えすぎると、食事がストレスになってしまいます。実は、“楽しんで食べる”ことも健康の一部です。心理学の研究では、食事を楽しむ人ほど満足感が高く、結果的に過食しにくい傾向があると示されています。完璧を目指すより、「少しずつ良い選択を積み重ねる」方が長期的に健康を保ちやすいのです。
参考論文:Macht, M. (2008). How emotions affect eating: a five-way model. Appetite.
まとめ:正解は一つではない。自分の“食の軸”を持とう
食事と健康に関する情報は、日々アップデートされています。大切なのは「流行」に流されず、自分の体がどう反応するかを観察することです。
- 炭水化物を“悪”と決めつけない
- カロリーより“栄養の質”を見る
- サプリはあくまで“補助”と考える
- 朝食も“体調に合わせて柔軟に”
- 食を“我慢ではなく、楽しむ習慣”に変える
食べ方は、あなたのライフスタイルの一部です。自分の心と体が心地よく感じる食事スタイルを見つけていきましょう。
参考文献・論文
- Hu, T. et al. (2012). Effects of low-carbohydrate diets versus low-fat diets on metabolic risk factors. American Journal of Epidemiology.
- Guasch-Ferré, M. et al. (2013). Nut consumption and risk of cardiovascular disease. BMC Medicine.
- Miller, E. R. et al. (2005). High-dose vitamin E supplementation may increase all-cause mortality. Annals of Internal Medicine.
- Betts, J. A. et al. (2014). The causal role of breakfast in energy balance and health. American Journal of Clinical Nutrition.
- Macht, M. (2008). How emotions affect eating: a five-way model. Appetite.


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