胃カメラは怖くない ― 健康を守るための検査を、もっと快適に

「胃カメラ」と聞くと、つい身構えてしまう人も多いかもしれません。
喉を通すときの違和感、息苦しさ、緊張感…。
そうした不安から、検査を避けてしまう人も少なくありません。

しかし、胃カメラは胃がんやポリープなどの早期発見に欠かせない大切な検査です。
しかも最近では、技術や方法の進歩により、以前よりずっと快適に受けられるようになっています。

胃カメラで何がわかるのか

胃カメラ(正式名称:上部消化管内視鏡検査)は、
口または鼻から細いカメラを挿入して、食道・胃・十二指腸の内部を直接観察する検査です。

この検査でわかる主な病気は以下の通りです。

  • 胃がんや食道がんの早期発見
  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
  • 逆流性食道炎
  • ヘリコバクター・ピロリ菌感染による炎症

とくに日本では胃がんの発症率が高いため、40歳を過ぎたら定期的な検査が推奨されています。

参考論文:Hamashima, C. (2018). Current issues and future perspectives of gastric cancer screening. World Journal of Gastroenterology.

検査時間はわずか5〜10分ほど

胃カメラというと長い時間の検査を想像するかもしれませんが、
実際の検査時間はおよそ5〜10分程度です。

鎮静剤を使用した場合は、その前後の準備や休憩を含めて30〜60分ほどですが、
カメラを挿入して観察している時間自体は非常に短く、
多くの方が「思ったよりすぐに終わった」と感じています。

特に経鼻内視鏡や鎮静下検査を選べば、不快感も少なく、体感時間もさらに短く感じるでしょう。

胃カメラの新しいスタイル ― 苦しくない検査へ

昔の胃カメラの印象は「苦しい」でした。
しかし現在では、技術の進化で大きく変わっています。

経鼻内視鏡

鼻から挿入するタイプで、舌の根元に触れにくく”オエッ”となりにくい方法です。
口から話すこともできるので、医師と会話しながら検査を受けられます。

かつては「鼻から入れるタイプは細いぶん画質が落ちる」と言われていましたが、
近年のスコープは改良が進み、経鼻タイプでも高画質で診断できる時代になりました。
新しい超細径スコープではレンズ性能・照明技術が大幅に向上し、
粘膜の微細な変化も十分に確認できるレベルに達しています。

研究でも、経鼻内視鏡は口からの通常内視鏡と同等の診断精度を保ちながら、不快感が少ないことが報告されています。
ただし、大きなポリープの切除など、処置を伴う場合には口からのスコープが使われるケースもあります。

参考論文:Campo, R. et al. (2018). Patient tolerance and safety of unsedated transnasal endoscopy compared to conventional sedated endoscopy. Endoscopy International Open.

鎮静剤を使った検査 ― 眠っている間に終わる快適な方法

もう一つの選択肢が「鎮静剤(静脈麻酔)」を使った胃カメラです。
これは、検査の前に鎮静剤を点滴で投与し、意識がぼんやりした状態から軽い眠りのような状態にして行う方法です。

検査中の記憶がほとんど残らず、「気づいたら終わっていた」という感覚で受けられるため、
「以前つらかったからもう受けたくない」という方にも広く選ばれています。

  • 鎮静剤には主にミダゾラムなどを使用
  • 医師がモニターで呼吸・脈拍・血圧を管理
  • 検査後は30〜60分ほど休憩してから帰宅

安全性にも十分な配慮がされており、大学病院や内視鏡専門クリニックでは標準的な方法として提供されています。
ただし、検査後は車の運転ができないため、公共交通機関や送迎を利用するようにしましょう。

鎮静剤を使わない場合でも、深呼吸を続けてリラックスすれば、
副交感神経が優位になり、軽い眠気を感じるほど穏やかな状態で受けられる人もいます。
とはいえ、”本当に眠っている間に終わる検査”を希望するなら、鎮静ありが現実的で確実です。

参考論文:Inoue, H. et al. (2020). Sedation for gastrointestinal endoscopy: past, present and future. Digestive Endoscopy.

快適に受けるための3つのコツ

1. 前日は消化の良い食事を

胃の中に食べ物が残っていると、検査の精度が下がります。
前日の夜は消化の良い食事(おかゆ、うどん、豆腐など)にして、
20時以降は絶食にするのが基本です。

2. 当日はリラックスして臨む

検査前の緊張は、喉や胃の筋肉を固くしてしまいます。
深呼吸をゆっくり続けることで、カメラの通りもスムーズになります。

また、検査中は医師や看護師の声かけに意識を向けると安心感が増します。

3. 信頼できるクリニックを選ぶ

検査を行う医師の経験や、設備の新しさも快適さに影響します。
口コミや公式サイトで「経鼻内視鏡対応」「鎮静検査可」などを確認しておくと良いでしょう。

定期検査が「未来の安心」につながる

胃カメラは、病気を”見つける”ためだけではありません。
小さな違和感の段階で原因を探り、“防ぐ”ための検査でもあります。

症状が出てからでは、治療の負担も大きくなりがちです。
年に一度、もしくは2年に一度でも良いので、
定期的なチェックを習慣にすることが、自分自身への最高のプレゼントです。

まとめ ― 胃カメラは「怖いもの」から「頼れるもの」へ

かつては不快だった検査も、今ではずっとやさしく進化しています。
経鼻カメラや鎮静剤をうまく活用すれば、”眠っている間に終わる”ような快適な体験も可能です。
しかも、検査時間はわずか数分程度
少しの勇気が、あなたの未来の健康を守ります。

怖さよりも、安心を。
そして、不安よりも、自分の未来への信頼を。

胃カメラを、あなたの健康習慣の一部として取り入れてみませんか?

参考文献・論文

  • Hamashima, C. (2018). Current issues and future perspectives of gastric cancer screening. World Journal of Gastroenterology.
  • Campo, R. et al. (2018). Patient tolerance and safety of unsedated transnasal endoscopy compared to conventional sedated endoscopy. Endoscopy International Open.
  • Inoue, H. et al. (2020). Sedation for gastrointestinal endoscopy: past, present and future. Digestive Endoscopy.
  • Mayer, R. J. et al. (2021). Advances in ultrathin endoscopy: performance, tolerance, and diagnostic accuracy. World Journal of Gastrointestinal Endoscopy.

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